祖父の葬儀の際、我々家族は祖父の弟さんと大揉めしました。

祖父は某銀行の支店長を務めており、定年退職してからも銀行関係の知り合いの方が近くに寄ったからと訪ねてきてくださったりお歳暮もたくさん届いて、周りの人々に恵まれていたのもあるでしょうが本当に人徳のある人でした。
そんな祖父が亡くなって、我が家は火が消えたように静かになりました。

祖父はとてもしっかりした人だったので、ガンで余命宣告を受けると身の回りのものの処分、譲り先を一つ一つ指定し、葬式の会社や規模まで細かくノートに書き、それを私たちに遺しました。

祖父が亡くなった晩、私たち家族は祖父のノートに書いてある通りに手配するだけでしたので、そのノートを見ている間は何度かまだ祖父が生きていてくれているような気がしました。

斎場の方が祖父を自宅に連れ帰ってくれて、しんみりとこれからの話をしていると突然祖父の弟が訪ねてきました。

彼と会うのは10年ぶりくらいで一度も祖父の入院先にも顔を出してくれなかったのになぜ今更と驚きと嫌悪を隠せませんでした。

彼は「この家にはもう男がいないから、俺が仕切る」と言い出します。
喪主も俺がやると。

祖父がなくなり、我が家に残ったのは祖母と叔母、それから私の母と私です。
たしかに男性は一人もいませんでしたが別にそれが理由で困ることは有りませんし、祖父の遺したノートには喪主は祖母にして欲しいと書いてありました。

しかし祖父の弟は勝手に「斎場はここに変更する。兄さんはすごい人だったのだから家族葬ではなくもっと豪華に見送らなければならない」と、聞く耳持たずです。

祖母と叔母は古い考えの人間で男性に逆らうことをせず祖父の弟にもオロオロするばかりでしたが、私の母はキャリアウーマンで会社でも男性とバリバリ張り合っているタイプですのでハッキリと「祖父の遺言通りにやる。余計な口出しをするなら邪魔だから帰ってくれ」と言いました。

「こういうのは男が先頭切ってやるものだろう」
「今時そんなこと言ってるのあなたくらいですよ。なにより本人は妻に喪主をさせると言っていますから私たちはその通りにします。なんで10年ぶりにいきなりポッと出てきたじいさんに仕切ってもらわなきゃいけないんですか」

年下の女性に強く言い返されたのが初めてだったのか母の迫力が効いたのかはわかりませんが、祖父の弟は一度帰って行きました。

祖母も「男がいなくなった家に行けば頼りにしてもらってチヤホヤしてもらえると思ったのかねえ」と呆れていました。
元々、男性相手にはヘコヘコするのに女性には威張り散らすタイプの人だったみたいです。
私たちはこれから静かに見送りたいのに先行きが思いやられました。

しかしそれからお葬式の時も火葬場に行ってからもずっと私たちのやることなすことに口を出し、それじゃダメだと文句を言い、せっかく焼香に来てくださった親戚のことも怒らせ、本当にウザくて仕方ありませんでした。

祖父のお骨とともに火葬場から帰ってきてから我が家には祖父と最期のお別れをしたくてと同僚の方や上司の方がたくさん来て、私たちは「これなら最初から大きな斎場でやればよかった」「祖父は目立つの苦手だったからね」と嬉しいやら悲しいやらでした。

その間も祖父の弟はずっと家にいて、同僚の方に向かってなぜか自分の自慢話をしていました。もう何度「帰ってくれ」と言ったかわかりません。

結局、ずっと彼に振り回されて私たちはゆっくり見送ることができませんでした。
祖父ももしかしたら彼が出しゃばってくるとわかって遺言ノートを細かく細かく作ったのかもしれません。

私たちは彼と縁を切ることを決め、納骨にも四十九日にも法事にも呼びませんでした。